2020年10月07日

浅草の女1-5



 翌朝。
「……、ん」
 ミナモは瞼の裏に暖かい朱色を感じてそっと眼を開けた。視界一杯に、同じ顔をした2人の幼女のつぶらな瞳が広がる。
(…………ぇ、)
 ミナモは数回瞬きをした。そこでようやく、お団子頭に黄色いリボンを蝶々結びにした黒髪の幼女たち(双子?)に顔を覗き込まれているのだと自覚する。
「……ぁ、の」
 ミナモが話しかけようとしたら、幼女たちは物凄い勢いで障子を左右にスパーン! と開けて縁側を走り去って行った。
「「若ー!! 姉御が起きたー!!」」
 ドタバタと駆ける音が遠くなっていく。
「…」
 ミナモは一瞬ポカンとした後、のろのろと起き上がった。
(ここは…?)
 辺りを見回す。どこかの和風建築の一室にいるようだ。
 清潔な畳にふかふかの敷き布団と掛け布団。床の間には掛軸と活け花が飾られ、隅には行灯が置かれている。落ち着いた木目調の天井と、部屋の奥に続く襖には松や梅が描かれている。
 反対側は幼女たちが開けっ放しにした障子と縁側があって、枯山水のような庭はないものの地面は綺麗に掃き清められていて、木製の塀が周りを囲んでいた。
(…旅館?)
 ミナモは首をかしげた。自身の服装を見やる。
「…」
 紺色の寝間着に黒い帯。封印される前と服装が違う。誰かが着せ替えたようだ。自分の着物はどこに行ったのだろう。
 考え込んでいると、遠くからまたドタバタと足音が響いてきた。いやドスドスか。かなり大きい。こちらに近づいている。
 またあの幼女たちだろうと思っていたら、ドスドスと縁側を走って来たのは黒髪の若い男だった。紺色の火事羽織と難燃性のズボンを着用している。そして特徴的なのが、右が○と左が×の白い瞳孔と紅色の虹彩だ。
「っ!!!」
 男はミナモと眼を合わせると、その瞳をぶるりと歓喜にうち震わせた。布団の中で上半身を起こす彼女に抱きつく。
「やっと起きやがったなァ…」
「!?!?!?」
 心底安堵した男の声がミナモの耳許で囁かれる。彼に頭と背中を抱き込められる。ミナモは状況が判らずに半ばパニックになった。

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posted by 偽名師 at 19:10| Comment(0) | 浅草の女 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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